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Facebookドメイン名事件:(2016)中国貿易仲裁ドメイン仲裁字第0012号裁定書

2016-05-18

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裁 定 書

「事件番号:CND‐2016000001」

 

原告:フェイスブック社(FACEBOOK、INC.)

 

住所 :アメリカ合衆国カリフォルニア94025、メンローパーク、ウィロー ロード1601(1601WILLOWROAD、MENLOPARK、CA94025、UNITEDSTATES)

代理人:北京市東権法律事務所 汪正弁護士、瀋ハン弁護士

 

被告:深セン市某某科学技術有限会社

 

紛争ドメイン名:facebookchina.cn

登録機構:廈門易名科学技術有限会社

 

北京

2016年3月24日

 

 

裁 定 書

(2016)中国貿易仲裁ドメイン仲裁字第0012号

 

中国国際経済貿易仲裁委員会ドメイン名紛争解決センター(以下、「ドメイン名紛争解決センター」と称する)は、2014年11月21日に発効し実施された《中国インターネット情報センター国家トップクラスドメイン名紛争解決方法》(以下、「《解決方法》」と称する)、《中国インターネット情報センター国家トップクラスドメイン名紛争解決手続き規則》(以下、「《手続規則》」と称する)、《中国国際経済貿易仲裁委員会の<中国インターネット情報センター国家トップクラスドメイン名紛争解決方法>に関する追加規則》(以下、「《追加規則》」と称する)の規定及び原告のフェイスブック社(FACEBOOK、INC.)が2016年1月28日にドメイン名「facebookchina.cn」に対し深セン市前海フェスブック科学技術有限会社を被告としてドメイン名紛争解決センターに提出したクレーム書に基づき、「facebookchina.cn」ドメイン名に関する紛争事件を受理した。事件番号はCND‐2016000001である。

 

現在、本件の審理は既に終結した。本件の専門家チームは《解決方法》《手続規則》及び《追加規則》の規定に基づき本裁決を下した。以下に、本事件の事件手続き、基本的な事実、当事者の主張、専門家チームの意見及び裁決をそれぞれ説明する。

 

一、事件手続き

2016年1月28日に、ドメイン名紛争解決センターは原告により提出されたクレーム書を受領した。

 

2016年1月29日に、ドメイン名紛争解決センターは電子メールの形式で原告からクレーム書を受領したことを確認した。同日、ドメイン名紛争解決センターはドメイン名の登録サービス機構である廈門易名科学技術有限会社と中国インターネット情報センター(CNNIC)に情報確認の通知書を送付し、そのWHOISデータベースにおける本件に関わるドメイン名の関連情報を提供することを要求した。

 

2016年1月29日に、ドメイン名の登録サービス機構である廈門易名科学技術有限会社は、ドメイン名紛争解決センターに、本件に関わる紛争ドメイン名は自社の登録サービスによるものであり、紛争ドメイン名の現在の状態が有効であり、現在紛争ドメイン名の所有者は本件の被告であることを確認したと回答した。

 

2016年2月2日に、ドメイン名紛争解決センターは電子メールの形式で原告にクレーム書の確認書及び送達通知書を送付し、クレーム書は既に審査を通過し被告に送付したことを確認、本件手続きは2016年2月2日に正式に開始された。同日、ドメイン名紛争解決センターはそれぞれ電子メールと郵便配達の形式で被告に書面によるクレーム通知書を送信且つ郵送し、被告に提訴された事実を知らせ、ドメイン名紛争解決センターが既に《手続規則》と《追加規則》の規定に基づき、電子メールの形式で被告にクレーム書及びその添付書類を送付したことを説明した。ドメイン名紛争解決センターは、また同日に電子メールの形式でCNNICと紛争ドメイン名の登録サービス機構である廈門易名科学技術有限会社に手続き開始通知書を送付した。

被告は2016年2月22日にドメイン名紛争解決センターに応答理由書及び証拠材料を提出した。ドメイン名紛争解決センターは2016年2月23日原告に上記材料を送付した。

原告と被告はいずれも1人の専門家チームによって本件を審理することを選択したため、《手続規則》と《追加規則》の規定に基づき、本件は1人の専門家チームにより審理されなければならない。ドメイン名紛争解決センターは2016年2月23日に郭禾先生に専門家の候補となった旨の通知書を送付し、意見を求めた。2016年2月24日に、郭禾先生は指定されたことに同意し受け入れると回答、本件を単独且つ公平に審理することを保証した。

 

2016年2月25日に、ドメイン名紛争解決センターは電子メールの形式で双方当事者及び上記指定予定専門家に専門家指定通知書を送付し、郭禾先生を本件の単独専門家として確定し、1人の専門家チームを形成して本件を審理することにした。同日、ドメイン名紛争解決センターは事件を専門家チームに引き渡した。

 

《手続規則》の規定によれば、専門家チームは設立日から14日以内に、即ち2016年3月10日(3月10日を含む)までに裁決しなければならない。審理において、専門家チームは原告に提出した2つの証拠について更なる説明と、明瞭としたものを提出するよう要求した。このため、専門家チームはドメイン名紛争解決センターに本件裁決の期限延期を請求した。ドメイン名紛争解決センターは検討を経て決定し、2016年3月10日に双方当事者に裁決期限を延期する通知書を送付し、本件の裁決期限を2016年3月24日まで延期した。

 

二、基本的事実

 

(一)原告について

 

本件の原告はフェイスブック社(FACEBOOK、INC.)であり、住所はアメリカ合衆国カリフォルニア94025、メンロー パーク、ウィローロード1601(1601WILLOWROAD、MENLOPARK、CA94025、UNITEDSTATES)であり、北京市東権弁護士事務所の汪正弁護士と瀋ハン弁護士に本件代理を委任した。

 

(二)被告について

 

本件の被告は深セン市某某科学技術有限会社であり、住所は深セン市であり、上海市某某弁護士事務所の某某弁護士に本件代理を委任した。

 

被告は2014年2月25日に廈門易名科学技術有限会社を通じてドメイン名「facebookchina.cn」を申請し登録した。

 

三、当事者の主張

 

(一)原告は下記のように訴えた。

 

原告は、2004年に設立され、世界的に知られているインターネット交流とインターネット・サービス会社であり、www.facebook.comウェブサイトを運営し、そのサービスは世界範囲に広がり、ユーザーが情報、写真、ビデオ及びその他のコンテンツに接続し共有することができるオンライン・ネットワーク・サービスを提供することで、インターネットをより社会化、より関連性を有するように変えている。原告は2004年に設立してから、インターネット業界において非常に目覚ましい成果を上げ、加入者数、アクセス数、オンライン広告又は商用ユーザーのカバー率のいずれも、原告は全てトップに立ち、知名度及び価値を最も有するインターネットブランドの一つである。よく知られているインターネット会社として、原告のウェブサイト(www.facebook.com)は、全世界ウェブサイト流量ランキングリストの第一位である。原告のwww.facebook.comウェブサイトは、現在のインターネットにおいて最も人気のあるネットワークプラットフォームとして、2015年9月まで、全世界において毎月15.45億を上回るアクティブユーザーを有し、モバイルアプリの毎月のアクティブユーザー数は12億である。上場した最初の年、2012年の収支報告書によると、アジアの広告収入は1.68億ドルに達し、売上収益とその他の収益は3千万ドルに達する。現在のその株式価値は2.260億ドルに達し、株価収益率は81倍に達する。原告は中国で非常に高い知名度を有し、早くも2005年に中国の大手新聞、雑誌により報道され、国立図書館の検索報告によると、2011年まで「FACEBOOK」に関する報道は合計4945件であった。百度(バイドゥ)、ビングなどの検索エンジンを利用して「FACEBOOK」を検索すると、検索結果は非常に多い。バイドゥニュース検索によると、紛争ドメイン名の登録が申請される前に、「FACEBOOK」をキーワードとして検索する場合、合計十数万のネットワークメディアによる記事があった。

 

原告のウェブサイトへの独立したアクセス流量の各年のランキングは下記のとおりである。

 

2009  第3位(全世界)

2010  第2位(全世界)

2011  第2位(全世界)

2012  第2位(全世界)

2013  第1位(全世界)

 

原告のウェブサイトの各年のユーザー数は下記のとおりである。

 

2004年12月  100万超      2011年12月    8.45億超

2005年12月  550万超      2012年4月  9.01億超

2006年12月  1200万超    2012年10月    10億超

2007年12月  3470万      2013年3月  11.1億超

2008年5月    1.239      2013年9月  11.9億超

2009年1月    1.5億        2013年12月    12.3億超

2009年4月    2億超          2014年6月  13.2億超

2009年9月    3億超          2014年9月  13.5億超

2010年2月    4億超          2014年12月    13.9億超

2010年8月    5億超          2015年3月  14.4億超

2011年1月    6億超          2015年6月  14.49億超

2011年6月    7.5億超      2015年9月  15.45億超

 

1.紛争ドメイン名は原告が民事権益を有する名称又は標識と同一又は見分けがつきにくく近似する

 

(1)原告は先願の民事権益を有する

 

2004年から、原告は中国で「FACEBOOK」などの商標について第9、25、35、38、41、42、45類などの複数の国際商品/サービスカテゴリにおいて商標出願を相次いで行った。今まで、原告は既に複数の「FACEBOOK」及びかかる中国登録商標を獲得した。原告は2009年7月7日に第35類のサービスにおいて第5251161号の「FACEBOOK」商標を登録し、2009年9月21日に第38類のサービスにおいて第5251162号の「FACEBOOK」商標を登録し、2010年2月21日に第25類の商品において第5926149号の「FACEBOOK」商標を登録し、2010年3月28日に第38類のサービスにおいて第6389501号の「FACEBOOK」商標を登録し、2014年4月21日に第9類の商品において第6389502号の「FACEBOOK」商標を登録し、2014年4月21日に第42類のサービスにおいて第6389503号の「FACEBOOK」商標を登録した。そのほか、原告はその他の「FACEBOOK」標識を含む商標を更に登録し、例えば、第36類と第42類のサービスにおいて「FACEBOOK脸譜」商標を登録し、第35類と第38類のサービスにおいて「THEFACEBOOK」商標を登録し、第9類の商品と第42類のサービスにおいて「FACEBOOKDEVELOPERGARAGE」商標を登録し、第35類、第38類、第41類、第42類、第45類のサービスにおいて「FACEBOOKHOME」商標を登録した。上記商標はいずれも有効期限内である。そのため、原告は「FACEBOOK」商標に対して中国で登録商標の独占権を有する。

 

原告は2004年に設立されてから、「FACEBOOK」商号を使用し始めた。「FACEBOOK」標識は原告の商号として、長期にわたる使用、宣伝、マスコミの注目及び商業的成功などを経て、現在は既に中国の一般公衆に認められている。《工業所有権の保護に関するパリ条約》(以下、「《パリ条約》」と称する)の第8条規定によると、商号は当該同盟のすべての加盟国において保護されるべきであり、それが商標の構成部分であるか否かに関わらず、出願又は登録する必要がない。中国及び米国は《パリ条約》の加盟国である。原告は米国法律に基づき設立された会社として、その商号は実際中国で大量に宣伝及び使用され、より高い知名度を有し、中国法律により保護されるべきである。そのため、原告は「FACEBOOK」標識に対する商号権を有する。

 

さらに、原告は「facebook.com」のドメイン名を有し、上記ドメイン名を継続的に使用して公衆に原告の商品及びサービスを宣伝し拡大している。

 

前述したように、原告の上記商標、商号は原告の中国における幅広い宣伝と使用を通じて、既に非常に高い知名度を有する。原告の上記権利を取得した日にちはいずれも被告が紛争ドメイン名の登録日(2014年2月25日)より早い。

 

(2)紛争ドメイン名は原告の先願民事権益を有する商標及び商号と十分に混同される類似性を有する

 

紛争ドメイン名「facebookchina.cn」は「facebookchina」と「.cn」の2つの部分によって構成される。ここで、「.cn」はドメイン名の共通部分に属し、「facebookchina」はドメイン名の識別可能な部分である。明らかに、紛争ドメイン名の識別可能な部分は「facebook」と「china」により構成され、「china」の英語の意味は「中国」であり、地域だけを標識しているので顕著性がなく、「facebook」は原告の先願商標及び商号と完全に一致している。原告の「FACEBOOK」商標と商号が強い顕著性と非常に高い知名度を有する場合、紛争ドメイン名はインターネットユーザーを極めて混同させやすく、インターネットユーザーに該ドメイン名は原告からのものであり、原告が中国市場に対して経営しているウェブサイトであると誤解させる。要するに、紛争ドメイン名は原告の先願商標権と商号権を有する「FACEBOOK」と同一又は見分けがつきにくく近似することを構成する。

 

そのため、紛争ドメイン名は原告が先願民事権益を有する名称又は標識と十分に混同される類似性を有し、《解決方法》第8条に規定の第1条件に合致する。

 

2.被告はドメイン名又はその主要部分に対して合法的権益を有しない

 

被告の名称と既存の情報によれば、被告は紛争ドメイン名の識別可能な部分について商標権、商号権などの権利又は合法的権益を有しない。また、原告は「FACEBOOK」標識に関わる権利を許可、譲渡又はその他の如何なる形式で被告に付与したことはなく、被告と業務上の連絡も取ったことがない。このため、被告は紛争ドメイン名に対して如何なる合法的権益がなく、《解決方法》第8条に規定の第2条件に合致する。

 

3.被告はドメイン名の登録又は使用に対して悪意がある

 

(1)被告は原告との区別を混同させ、公衆を誤解させようとした意図があり、《解決方法》第9条第1款第(3)項に規定の悪意がある場合に合致する

 

まず、「FACEBOOK」は憶測によってつくり上げられた単語であり、強い顕著性を有する。原告の長期にわたる使用と宣伝を経て、原告の「FACEBOOK」商標及び商号は既に極めて高い知名度を有する。意図的に複製と模倣しない限り、母国語が中国語である被告はこのように独特の標識をドメイン名として想到しにくい。また、被告と原告は同じインターネット業界に属し、その公式ウェブサイトにおける「業界ニュース」欄には原告に関わる記事が明記されている。要するに、被告は世界一位の社交ネットワーク会社である原告及びその先願商標と商号を既に承知していた。上記事情に鑑みて、被告が依然として「facebookchina」を選択し主要識別可能な部分としてドメイン名を登録したことは、原告との区別を混同させることで、かかる公衆に、紛争ドメイン名をもとに構築されたウェブサイトは原告により設立され、又は原告と許可、協賛などの関連関係があり、原告が中国で開設し、中国ユーザー向け特化したウェブサイトであると誤解させる意図がある。

 

次に、被告は紛争ドメイン名が指すウェブサイトにおいて「脸譜科学技術」と自称し、原告との区別を混同させようとしている。事実上、原告の会社名に該当する中国語翻訳は「脸譜会社」であり、原告はインターネットのかかるサービスにおいて「脸譜」商標の先願商標権を有する。多数の中国語メディアも「脸譜」又は「脸譜会社」で原告を指している。被告は「脸譜科学技術」と自称し、明らかに原告にただ乗りする悪意がある。

 

さらに、被告は「金融部落」という名前のアプリケーションを開発し、ユーザーがダウンロードできるようにアプリケーションプラットフォームにアップロードしている。被告が該アプリケーションのために追加した記述又は名称には「facebook社交プラットフォーム」と「com.llkj.facebook」が含まれている。被告の上記行為は明らかにかかる公衆を誤解させ、該アプリケーションは原告によって開発されたと信じ込ませるためである。

 

最後に、被告の紛争ドメイン名を使用し、「脸譜科学技術」と自称し、アプリケーションを提供するなどの一連の行為は既にかかる公衆を混同させている。「知乎質疑応答」(インターネットの質疑応答コミュニティーウェブサイト)において、あるネットユーザーが被告は原告と関連あるのかと質問しているが、一部のネットユーザーは被告のアプリケーションは原告により開発されたものと誤解し、騙されたと主張している。

 

以上をまとめると、被告の上記行為は明らかに故意があり、原告の知名度にただ乗りして、不当な利益を儲けようとする意図がある。このような混同は被告に原告のその商標と商号のために付した投入を無償で占有させ、原告の利益への損害を与えた。

 

そのため、被告の行為は《解決方法》第9条第1款第(3)項の規定に合致する。

 

(2)被告は誠実信用の原則に反して紛争ドメイン名を登録したため、《解決方法》第9条第1款第(4)項の「その他の悪意のある場合」に関する規定に合致する。

 

原告及びそれが享有する知名度が極めて高い先願商標と商号を明らかに承知していながらも、被告は依然として「facebookchina」を紛争ドメイン名の識別可能な部分として登録したため、誠実信用の原則に明らかに反する。同時に、被告の「脸譜科学技術」と自称し、アプリケーションを提供するなどの一連の行為は意図的に混同させる行為に属し、原告の利益にただ乗りして、不当な利益を儲けることを目的としている。

 

以上をまとめると、被告が紛争ドメイン名を登録又は使用した行為は悪意があり、《解決方法》第8条に規定の第3条件に合致する。

 

被告は紛争ドメイン名「facebookchina.cn」に対して商標権、商号権などの合法的権益を有せず、その紛争ドメイン名を登録した行為は《解決方法》第9条に規定の悪意ある行為となる。

 

以上の被告の原告の権益への侵害に鑑みて、原告は紛争ドメイン名を原告に移転することを請求する。

 

(二)被告の反論

 

1.原告により提出されたクレーム書及び委任状の形式には不備が存在する

(1)関連法律の規定によれば、当事者によって提出された証拠が中華人民共和国領域外で形成された場合、該証拠は所在国の認証機関による証明が必要であり、中華人民共和国の当該国に駐在する領事館による認証、又は中華人民共和国が該所在国と締結した関連条約に規定の証明手続きを履行しなければならない。原告は外国企業であり、提出した委任状が領域外で作成された場合、法律に規定の証明手続きを履行すべきであり、領域内で形成された場合は、該委任代表が委任状に署名した期間内に中国で合法的に滞在したビザ頁、出入国記録印鑑頁、パスポートトップ頁及び署名頁を提出しなければならない。

 

原告は上記義務を履行していないため、被告は委任状に記載の代理人資格及び権限を認めない。

 

(2)《中華人民共和国弁護士法》(以下「《弁護士法》」と称する)の関連規定によれば、法律事務所が統一で当事者の依頼を受け、弁護士は弁護士事務所に指名派遣され当事者に法的サービスを提供するべきである。弁護士は実務実行過程に勝手に委任を受けてはならない。

 

弁護士事務所の公文書を提供していない場合、クレーム書に記載の署名人である汪正、瀋ハンが弁護士の身分でクレーム書に署名したことは法的根拠が足りず、その署名したクレーム書は法的効力を有しない。

 

以上に基づき、委任状及びクレーム書の形式には不備が存在するため、実体の真実性に影響を与え、原告は不利な結果になるべきである。

 

被告は《解決方法》第8条と第9条に基づき下記のように応答し、原告の上記代理人の資格と権限に対する確認を構成しない。

 

2.被告が紛争ドメイン名を登録し又は使用したことは悪意がない

 

(1)被告の紛争ドメイン名に対する使用は悪意がない

 

中国語の「脸譜」は原告と唯一の対応関係を形成していない。「脸譜」という場合、公衆がより多く想到するのは中国伝統的な芸術である脸譜化の人顔である。被告が中国語の「脸譜」を商号として採用したことは、《現代中国語辞書》における汎用の解釈——「演劇におけるある役者(一般的には敵役である)の顔に描かれた種々の図形であり、人物の個性と特徴を表現するのに用いられる」である。会社の英文名に用いられたのは「ShenzhenQianhaiLianpuTechnology.Co.Ltd.」である。「脸譜」は商標登録カテゴリの第45類「出会い系サービス、インターネット経由で出会い系サービスを提供する」における商標権者は杭州快魚科学技術有限会社であり、原告ではなく、原告の該カテゴリでの商標出願は承認されておらず、現在の法的地位は無効である。被告の紛争ドメイン名に対する使用、宣伝、運営などのコンテンツもそれを原告に連想させ対応させた故意がない。そのため、権利への保護は市場の公平競争に影響を与えるまで拡大させるのは良くない。

 

(2)被告のドメイン名に対する登録は悪意がない

 

被告は中国最先端の金融モバイルインターネット商品の提供者になるために専念しており、主な商品は金融部落APPであり、金融業界のオンライン情報伝達及びオフライン交流サロンに集中している。原告のサービス対象及びビジネスモデルとはいずれも異なり、被告はある程度の好意の努力を尽くしている。

 

要するに、被告は《解決方法》第9条に記載のドメイン名を悪意に登録又は使用した行為がない。

 

3.紛争ドメイン名は原告のドメイン名、商号又は商標と混同させる近似性を有しない

 

(1)原告が有するドメイン名、商標、商号の中国での現状

 

I.Eのアドレスバーにfacebook.comを入力すると、ウェブページには「該ウェブページを表示できない、改めてロードしてください」が表示される。www.baidu.comを開けて、サーチバーに「FACEBOOKはなぜ中国で利用できないのか」を入力する。chinanewsは中青オンライン記者の文章を転載しているが、文章には、中国宣伝部副長官、国務院ネットワーク通信事務室の主任魯イは「なぜfacebookなどのウェブサイトは中国でアクセスできないのか」などの質問に応答する時、「中国の対外開放の政策は変わらない……我々の挑戦は中国の法律に合致することである……我々が容認できないことは、中国の市場を占め、中国で金を稼ぎ、中国を中傷することであり、これは容認することはできない。」と述べたと書いてある。その意味は、原告が現在中国市場へ進出できない原因は、中国の法律に反するからである。

 

(2)原告は法により中国市場への進出権限を取得していないため、原告は「FACEBOOK」に対して今まで中国内で如何なる《中華人民共和国商標法》(以下「《商標法》と称する」)の意味に合致するビジネス使用行為が存在せず、インターネット新規メディア、伝統的メディア及び社会公衆の原告の「FACEBOOK」に対する宣伝、報道及び評論はいずれも原告による行為ではなく、原告により提供されたその知名度を証明する証拠は、《商標法》の意味における商標の使用ではなく、ビジネス使用行為に属しない。原告は今まで「facebook」商標、商号を実際に使用したことがなく、それが「facebook」の商標、商号に対する広告宣伝であることを証拠を挙げて証明しておらず、「facebook」商標が中国で有名商標/周知商標として保護された記録及びその他の「facebook」が有名/周知であることを証明できる証拠を提供することができない。

 

以下、マスコミの宣伝、報道及び評論が商標使用行為に属するか否かについて立法と司法実務の面からその性質を定める。

 

従来の習慣に従って、商標権者の商標使用行為を商標(能動)使用行為と称し、それに対応して、社会公衆の商標に対する使用行為を商標受動的使用行為と称する。商標受動的使用行為は主にマスコミと社会公衆の商標に対する宣伝、報道、評論などに表現される。現在、我が国の立法と司法実務業界の考え方は、商標受動的使用行為は独立した法律地位を有しない。

 

商標法律制度における商標受動的使用行為に対する否定態度:

 

《商標法》第32条には「他人が既に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で出し抜いて登録してはならない」と規定され、「既に使用している」と「商標」の主体はいずれも同一の「他人」であるため、該条に規定された商標とは「他人が生産営業活動に実際に使用したことのある商標」を指し、商標使用者は商標の被登録者であるべきであり、よって商標受動的使用行為が適用される空間を排除している。また、例えば、《商標法》第48条には、「この法律で言う商標の使用とは、商品、商品の包装又は容器及び商品の取引文書に商標を用いること、又は広告宣伝、表示及びその他の商業活動に商標を用いることにより、商品の出所を識別することを含む行為をいう」と規定され、該条には商標使用の内面的な意味が規定されていないが、全ての挙げられた商標の使用方法には、例外なく経営者の商標に対する使用行為であり、商標受動的使用行為を明確に排除していないが、商標受動的使用行為に名分を与えてもいない。

 

《商標の権利付与・権利確定に係わる行政事件の審理における若干問題に関する最高人民法院の意見》(法発[2010]12号)(以下「《意見》」と称する)は商標の実際の使用について原則的に規定し、第20条の第2款には、「商標権者自らの使用、他人の使用を許可及びその他の商標権者の意志に反しない使用は、いずれも実際の使用行為に属すると認定できる」と規定され、該《意見》は商標権者の実際の使用を「商標権者の意志に反しない使用」までに拡大している。該規定によれば、商標受動的使用が商標権者の意志に反しない場合、それを商標使用行為と見なすことができる。該規定は商標受動的使用行為を間接的に認めているが、それは商標能動的使用行為に変換する必要があり、逆に、商標受動的使用行為は独立した法律地位がないことを意味する。

 

商標の司法実務における商標受動的使用行為に対する否定的態度:

 

「索愛」商標行政訴訟事件、「伟哥」商標民事訴訟事件において、マスコミと社会公衆はソニー・エリクソン会社の「ソニー・エリクソン」ブランドの携帯電話を「索愛」と称し、米国ファイザー株式会社の勃起不全を治療する薬品「viagra(バイアグラ)」を「伟哥」に訳し、それらの商標の別名は広く宣伝し報道された後、世界に広く知られている。

 

「伟哥」商標事件の関連裁定書と「索愛」商標事件の最終判決書は、いずれも《商標法》第31条(注記:新しい《商標法》第32条)の規定によれば、先に登録された商標は被登録者自身が商業活動において使用すべきであり、社会公衆の商標に対する使用行為は経営者の商標に対する使用行為ではなく、《商標法》第31条の規定を適用することができないと判断している。「伟哥」事件において、裁判所は、「マスコミの報道では「伟哥」と「Viagra」を対応させることが一般的であるが、上記報道はいずれもマスコミが行ったものでファイザー株式会社などが行ったものではないため、ファイザー株式会社などの自社商標に対する宣伝ではない。ファイザー株式会社も「万艾可」が公式商品名と明確に声明し、中国内陸で「伟哥」という商標を使用していないと認めている。そこで、マスコミが宣伝において「Viagra」を「伟哥」と称したことは、ファイザー株式会社などが当時「伟哥」を商標とした本音を反映したと確定できない。そこで、提供された証拠により「伟哥」が自社の未登録商標であると十分に証明することができない」と判断している。「索愛」商標事件の二審判決は一審判決を取り消し、二審裁判所は、「先に登録された商標は被登録者自身が商業活動において使用するべきである」、「これらの報道、評論はいずれもソニー・エリクソン(中国)会社が行ったものではない。ソニー・エリクソン(中国)会社は如何なる「索愛」製品に関わる製造、販売及び宣伝などの商業活動を行っていない」、「ソニー・エリクソン(中国)会社は「索愛」がその会社の略称又はその携帯電話及び電子製品の略称であるとのことに賛成しない」と判断している。そのため、ソニー・エリクソンは「索愛」を商標として商業的に使用しておらず、一審の判決がかかる公衆とマスコミの「索愛」に対する使用を、ソニー・エリクソンの使用と同様にさせたことは、法的根拠が足りない。

 

知的財産権は地域性があり、権利に対する保護は特定の法域内で該法域の法律法規、政策、国情及び公衆利益に合致するか否かを先に考え、次に該当する知名度を有するか否かを考えるべきであり、これは分別しにくい近似性を有するか否かを判定するキーポイントであり、そうでない場合、権利の境界を越え、権利を過度に保護し、市場の公平競争に影響する効能性が高い。原告は中国国内で法により市場進出権限を取得していないため、そのドメイン名、商標、商号を能動的に使用した営利性行為がなく、原告により提出された証拠は上記証明力がなく、そのため、被告は紛争ドメイン名は原告のドメイン名、商標、商号と分別しにくいという近似性はないと主張している。

 

以上をまとめて、被告は専門家チームが原告の請求を却下することを請求する。

 

四、専門家チームの意見

 

専門家チームは《解決方法》《手続規則》及び《追加規則》に基づき本ドメイン名紛争について審理し裁決を行った。

 

被告が答弁において先に原告代理人の資格問題を提出したことに鑑みて、専門家チームは本件の審理を2つに分けて行い、即ち先ず原告代理人の資格について審理し、その後、実質的な面から、双方当事者が有する権利と被告の悪意問題を審理した。

 

専門家チームは原告により提出された全材料を調べた結果、原告が本件について2人の代理人に依頼した委任状はあるが、原告代理人が所在する弁護士事務所が発行した2人の代理人である弁護士の身分を証明する公文書はなかった。その後、原告代理人はその所在する弁護士事務所の公文書を追加で提出した。但し、被告はこの追加を認めてない。

 

専門家チームは、被代理人と代理人との委任関係は原告と代理人の間の委任状を通じて既に確認されている。ドメイン名紛争解決センターのかかる規則は、全てのドメイン外で発生した証拠を公証により認証しなければならないと要求せず、代理人は弁護士の身分で事件を代理しなければならないとも要求せず、代理人が弁護士の身分で本件を代理するか否かは本件の結果に対して何の影響もない。そのため、専門家チームは原告の代理人により提出されたその所在する弁護士事務所がその弁護士身分を証明する公文書を受け入れ、本件の原告代理人の弁護士身分を認める、と判断している。

 

《解決方法》第8条の規定によれば、以下の条件に合致する訴えは、専門家チームにより支持されるべきである。

(一)訴えられたドメイン名と原告が民事権益を享有する名称又は標識は同一であり、又は十分に混同させる近似性がある。

(二)訴えられたドメイン名の所有者はドメイン名又はその主要部分に対して合法的な権益を有しない。

(三)訴えられたドメイン名の所有者はドメイン名の登録又は使用に対して悪意がある。

 

原告は以上の各条件を同時に備えることを証明しなければならない。

 

《解決方法》第9条の規定によれば、訴えられたドメイン名の所有者が次の各号の一に該当する場合、その行為は、悪意によるドメイン名の登録又は使用を構成する。

(一)ドメイン名の登録又は譲受が、当該ドメイン名を民事権益所有者とする原告又はその競争相手に売却、貸与又はその他の方式で譲渡して、不当な利益を得るために行われた場合。

(二)他人が合法的な権益を享有する名称又は標識を複数回にわたって自分のドメイン名として登録し、他人がドメイン名を使いインターネット上でその合法的な権益を享有する名称又は標識を使用することを妨害した場合。

(三)ドメイン名の登録又は譲受が、原告の名誉を損害し、原告の正常な業務活動を妨害し、又は原告との区別を混同させ、公衆を誤解させるために行われた場合。

(四)その他の悪意がある場合。

 

本件の当事者により提出されたクレーム書、答弁理由書及びその各添付された証明材料及び追加材料に基づき、本件の専門家チームは事件の実体部分に対して下記の意見を出した。

 

(一)完全に同一又は分別しにくい近似について

 

1.原告が権益享有する標識について

 

原告は、ドメイン名紛争解決センターに米国デラウェア州の州務長官が2015年8月10に発行した原告の主体資格に関する証明書を提出した。その証明書には、原告の名称が「FACEBOOKINC.」であり、会社は2004年7月29日に設立され、2015年8月10日まで依然として合法的に存在していると記載されていた。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第6389502号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2014年4月21日から2024年4月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第9類であり、その中には「アップロード、投稿、表示、陳列、標記、作成、共有又はインターネット又はその他の通信ネットワークにおいて電子媒体又は情報を提供するのに用いられるソフトウェア」が含まれ、商標の登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第5926419号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2010年2月21日から2020年2月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第25類であり、その中には「紳士服、婦人服、子供服、ワイシャツ、Tシャツ、革ベルト(服飾用)、ジャケット(洋服)、上着、コート、肌着、ブラウス、フィットする下着(洋服)、ブラジャー、短パン、ズボン下、ズボン、スカート、ネクタイ、スカーフ、バンダナシルク(ネッカチーフ)、寝間着、パジャマ、カジュアルな洋服、ハイソックス、スエットシャツ、ランニングシャツ、下着(洋服)、装飾用ベルト(衣類)、エプロン(衣類)、キャップ、シャッポ、帽子(ヘッドキャップ)、日よけ帽子、女性の肩帯付き長袖下着(下着)」が含まれ、商標の登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第5251161号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2009年7月7日から2019年7月6日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第35類であり、その中には「学校生活、広告貼付の分類配布、バーチャル・コミュニティ、コミュニティーネットワーク、写真共有、ファッションショーに関わるオンライン名簿企業情報を提供する」ことが含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第5251162号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2009年9月21日から2019年9月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第38類であり、その中には「登録されたユーザーのために学校生活、広告貼付の分類配布、バーチャル・コミュニティ、コミュニティーネットワーク、写真共有、ファッションショーに関わる情報を伝送するオンラインチャットルーム」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第6389501号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2010年3月28日から2020年3月27日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第38類であり、その中には「アップロード、投稿、表示、陳列、標記及びメッセージ転送、オーディオとビデオのスクリーンショットを含むインターネット又はその他の通信ネットワークにおけるオーディオ・ビデオ放送サービス、一般のユーザーにメッセージを転送するためにオンラインチャットルームと電子掲示板を提供し、データベース接続サービスを提供し、インターネットチャットルーム、情報転送、電子メール、電気通信サービスを提供する」ことが含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第6389503号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK」、商標登録の有効期限が2014年4月21日から2024年4月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第42類であり、その中には「他人のためにウェブサイトを作成且つ保守し、コンピュータプログラムの変換及びコンピュータデータの変換(媒体からの変換でないもの)、インターネット検索エンジンの提供、コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第14108117号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK脸譜」、商標登録の有効期限が2015年6月7日から2025年6月6日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第36類であり、その中には「骨董品の評価、美術品の評価、宝石の評価、金銭の評価、切手の評価、アパートの貸与、アパートの管理、家屋の代理、建物の売買又は貸借の代理又は仲介、建物又は土地の鑑定評価、不動産の管理、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第14108731号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOK脸譜」、商標登録の有効期限が2014年4月14日から2024年4月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第42類であり、その中には「コンピュータソフトウェアの設計、コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)、他人のためにウェブサイトを作成且つ保守、インターネット検索エンジンの提供、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第5251160号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「THEFACEBOOK」、商標登録の有効期限が2009年7月7日から2019年7月6日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第35類であり、その中には「学校生活、広告貼付の分類配布、バーチャル・コミュニティ、コミュニティーネットワーク、写真共有、ファッションショーに関わるオンライン名簿企業情報の提供」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第5251159号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「THEFACEBOOK」、商標登録の有効期限が2009年9月21日から2019年9月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第38類であり、その中には「登録されたユーザーのために学校生活、広告貼付の分類配布、バーチャル・コミュニティ、コミュニティーネットワーク、写真共有、ファッションショーに関わる情報を伝送するオンラインチャットルーム」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第8414507号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKDEVELOPERGARAGE」、商標登録の有効期限が2014年7月14日から2024年7月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第9類であり、その中には「アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)として使用されるコンピュータ・ソフトウェア、便利コミュニティーのオンライン・サービス、コミュニティーのネットワークアプリケーションの構築及び復元、アップロード、ダウンロード、アクセス及びデータ管理に用いられるコンピュータ・ソフトウェアアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第8414526号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKDEVELOPERGARAGE」、商標登録の有効期限が2011年10月28日から2021年10月27日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第41類であり、その中には「教育会議の手配及び運営、ユーザーにより創作され又は特定内容を有するオンライン電子雑誌の発刊の提供、ユーザーにより創作され又は特定内容を有するオンライン電子出版物(ダウンロードしたものでない)の提供、ソフトウェア開発分野のオンライン及び現場非営利性ショー及びイベントの手配及び運営」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第8414525号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKDEVELOPERGARAGE」、商標登録の有効期限が2014年4月21日から2024年4月20日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第42類であり、その中には「登録ユーザーにより団体を構築しイベントを開催、討論に参加、社交に加入、ビジネスとコミュニティーネットワーク交流のバーチャル・コミュニティを方式とするコンピュータサイト(ウェブサイト)のホスティング、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第13149303号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKHOME」、商標登録の有効期限が2015年3月14日から2025年3月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第35類であり、その中には「買い手と売り手の間の連絡のためのオンライン商業仲介サービスの提供、小売りを目的とする通信媒体による商品の表示、広告、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第13149208号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKHOME」、商標登録の有効期限が2015年1月14日から2025年1月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第38類であり、その中には「携帯電話機による通信、ネットワークによるラジオ放送の提供、ネットワークによるラジオ放送の提供、電話による通信、コンピュータ端末による通信、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第13149207号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKHOME」、商標登録の有効期限が2015年3月14日から2025年3月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第41類であり、その中には「インターネット経由でソフトウェア・ディベロッパーズに提供される教育、教育、インターネット経由でソフトウェア・ディベロッパーズに提供される教育、研修の提供、インターネット経由でソフトウェア・ディベロッパーズに提供される研修、娯楽、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第13149206号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKHOME」、商標登録の有効期限が2015年2月28日から2025年2月27日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第42類であり、その中には「技術研究、科学研究、コンピュー・ソフトウェアの設計、コンピュータ・ソフトウェアのバージョンアップ、コンピュータ・ソフトウェアの保守、コンピュータシステムの設計、コンピュータシステムの分析、……」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家工商行政管理総局商標局により発行された第13149205号の商標登録証の電子走査ファイルを提出した。該走査ファイルに記載された情報には、商標イメージがブロック体文字「FACEBOOKHOME」、商標登録の有効期限が2015年1月14日から2025年1月13日までであり、登録の商品カテゴリが国際分類法による第45類であり、その中には「社交界における付き添い、オンラインによるソーシャルネットワーキングサービス、異性の紹介サービス」が含まれ、商標登録者は原告であることが含まれている。

 

上記証拠の真実性問題に対して、被告は答弁において異議を申し立てていない。専門家チームはこれらの証拠がいずれも真実性を有すると推定した。但し、原告により提供されたこのような商標登録証のうちの一部は本件の紛争ドメイン名が登録された後に発行されたものである。そのため、この部分の証拠は、本件紛争ドメイン名の登録時又は登録前に原告が享有する権益であることを十分に証明することができない。この部分の証明を差し引いても、専門家チームは依然として、原告が本件紛争ドメイン名の登録時に「FACEBOOK」及び「FACEBOOK」に関連する標識に対して中国において法により商標独占権を有すると認定している。

 

一方、原告により提出されたその主体資格に関する証拠から、原告の商号が「FACEBOOK」であることを知ることもできる。《パリ条約》第8条には、「商号は本同盟の全ての国で保護されるべきであり、それが商標の一部であるか否かに関わらず、出願と登録の義務がない」と規定されている。我が国は《パリ条約》の加盟国であり、我が国は該条約に加入する時、該条項について保留していないため、該条項は我が国で拘束力がある。上記から分かるように、原告の商号「FACEBOOK」は我が国で法律により保護される権利を有し、商号とする「FACEBOOK」に対する保護は国民待遇原則に従うべきである。

 

以下、被告が答弁で言及した原告の商標を自分は使用しなかったため、いずれも受動的使用に属し、さらに権利の問題が存在しないことについて、検討する。

 

2.原告が権利を有する標識と本件紛争ドメイン名との混同性に関する認定

 

本件の紛争ドメイン名「facebookchina.cn」は構造的に2つに分けられる。そのトップ・レベル・ドメイン名「.cn」は地域又は国家ドメインとして、「中国大陸」を代表する。その商標とする区別性は本件の紛争ドメイン名における2レベルドメイン名「facebookchina」より明らかに弱い。然も、2レベルドメイン名の構成も二つの部分に分けられることができ、即ち「facebook」と「china」である。「china」が「中国」であるため、本件の紛争ドメイン名における最も区別作用を有する部分は「facebook」である。「facebook」は原告が権益を有する標識「FACEBOOK」と比べ、その文字構成は符号の大文字と小文字の区別を考えない状況において完全に同じく、如何なる差もない。これにより、専門家チームは、本件の紛争ドメイン名は原告が民事権益を有する名称又は標識と十分に混同されると判断している。そこで、本件の状況は《解決方法》第8条第1項に規定の条件を満たす。

 

(二)被告の権利又は合法的利益について

 

被告は本件の審理過程にドメイン名紛争解決センターに中国商標ネットワークで検索した商標登録情報に関わるウェブページの印刷物を提出した。該印刷物には杭州快魚科学技術有限会社が第45類の商品において漢字「脸譜」をイメージとしてサービス商標を登録した関連情報が記載されている。

 

被告は更にドメイン名紛争解決センターに中国商標ネットワークで検索した商標登録情報に関わるウェブページ印刷物を提出した。該印刷物には原告が中国で漢字「脸譜」で第45類の商品において商標登録の出願に成功していない情報が記載されている。

 

専門家チームはこの2つの証拠が真実性を有すると推定するが、同時に、この2つの証拠は、第45類の商品において本件の当事者以外の案外人が「脸譜」の2文字で形成された商標に対して商標権を有することしか証明できず、原告は該類商品において「脸譜」の2文字による商標登録が許可されていない。しかしながら、これらの事実は被告と直接的関係がなく、被告が「FACEBOOK」に対して権利を有することを証明できない。即ち、被告が本件の紛争ドメイン名に対して法律に保護される先願の合法的な権益を有することを証明できない。さらに、漢字「脸譜」と本件の紛争ドメイン名との関係は本件の処理範囲ではない。上記状況に基づき、専門家チームは被告は本件の紛争ドメイン名に対して合法的権益を有しないと推定した。そこで、本件の状況は《解決方法》第8条第2項に規定の条件を満たす。

 

(三)悪意について

 

原告はドメイン名紛争解決センターに登録済みの関連ドメイン名の情報を提出し、その中には「facebook.com」「facebook.org」「facebook.co」及び「facebook.net」が含まれている。これらのドメイン名の全ての登録日はいずれも本件の紛争ドメイン名が登録される前であり、最も早い登録日は1997年である。

 

原告はドメイン名紛争解決センターにAlexにより公表された原告の公式サイト「facebook.com」のアクセス数が全世界ウェブサイトにおけるランキングの証明書を提出した。該証明書には、「facebook.com」ウェブサイトの全世界ウェブサイトにおける綜合ランキングは第2位であり、中国語ウェブサイトにおけるランキングも第2位であると記載されている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに新浪ウェブサイトにより報道された原告の公式サイトの流量が2009年で全世界ウェブサイトにおけるランキングが第3位である記事、及びcomScoreにより公表された2007年の原告「facebook.com」ウェブサイトのランキングは第17位であり、2008年のランキングは第15位である記事を提出した。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに2012年の財務年度報告書を提出した。その中には、原告の2012年6月の株式価値は472億ドル以上に達し、全世界の月間ユーザーは10.6億に達し、日間ユーザーは6.18億に達すると明記されている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに中国国家図書館を通じて2012年1月に「facebook」をキーワードとして検索した3500余りの原告に関わる中国語記事の抜粋を提出した。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに「facebook」をキーワードとしてバイドゥを通じて検索した原告に関わる情報の一部の検索結果の印刷物を提出した。該印刷物によると、検索された結果が1億を超え、且ついずれも原告と直接関連する。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに「facebook」をキーワードとしてバイドゥニュース欄を通じて検索した関連情報の結果のウェブページトップページの印刷物を提出した。その中には、検索されたメッセージが10万件を超え、該ページに表示された全ての情報はいずれも原告と関係すると示されている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに被告の工商登録情報を提出した。その中には、被告の設立時間は2014年2月26日であると明記されている。

 

原告はドメイン名紛争解決センターに北京市方園公証処により発行された(2016)京方園内経証字第01199号公正証書の走査ファイルを提出した。該走査ファイルには下記内容が記載されている。

1、中華人民共和国工業情報化部ICP/IPアドレス/ドメイン名情報ファイリング管理システムにおける本件の紛争ドメイン名が指しているウェブサイトの所有者は原告である。

2、本件の紛争ドメイン名が指しているウェブサイトの業界新聞欄には幾つかの原告に関するメッセージがあり、「米国ユーザーのランキングリストにおいて原告のランキングが第1位である」などを含む。

3、知乎ウェブサイトにおける被告が本件の紛争ウェブサイトで提供された商品に関するユーザー討論であり、クライアントが被告を原告として誤解した内容がある。

4、被告はクライアントにプログラムダウンロードパッケージを提供する時、プログラムパッケージを「com.llkj.facebook」と名付けている。

 

被告はドメイン名紛争解決センターにインターネットブラウザにおいて原告のウェブサイトwww.facebook.comを検索してもウェブページ内容が表示されないウェブページのスクリーン・ショットを提出した。

 

被告はドメイン名紛争解決センターに中国青年報の記者陳ロ、楊杰が2014年10月30日に取材し作成した中国宣伝部の副長官、ネットワーク通信事務室主任魯イの「なぜfacebook等の外国ウェブサイトは中国でアクセスできないのか」に関する解釈文を提出した。

 

被告はドメイン名紛争解決センターに北京市高級人民裁判所(2007)の高民終字第1685号の民事判決書及び北京市高級人民裁判所(2008)高行終字第717号の行政判決書を提出した。

 

該証拠の真実性に対して双方当事者はいずれも異議を申し立てていない。専門家チームは前記証拠が真実性を有すると推定した。

 

原告は、前記証拠に基づき、原告の商標と商号が中国を始めた全世界の範囲内で既に非常に高い知名度を有すると主張する。被告が本件の紛争ドメイン名を登録したことは、原告の商標と商号が既に広く知られていることを明らかに承知していながら、原告の知名度を借りて自分のクライアントを拡大するための故意的な行為である。

 

被告は、提出した証拠は、原告の商標が中国大陸で一度も実際に使用されたことがないことを十分に証明できると主張している。関連マスコミの報道はいずれも原告自身が使用したものではなく、このような使用も商標法的意味での使用に属しない。原告は中国国内で市場進出権限を法により取得していないため、権利に対する保護はまず特定の法域内で該法域の法律法規、政策、国情及び公衆利益に合致するか否かを考え、次に該当する知名度を有するか否かを考えるべきであり、そうでない場合、権利の境界を越え、権利を保護しすぎて、市場の公平競争に影響を与える可能性が非常に高い。

 

専門家チームは前記証拠に基づき、下記のように判断している。

1、原告の商標と商号「FACEBOOK」は本件の紛争ドメイン名の登録時に中国国内で既に非常に高い知名度を有する。被告が、原告が提出した関連マスコミによる報道の証拠は原告がその商標「FACEBOOK」を「能動的に使用した」ことを証明できないと申し立てているが、これらの証拠は少なくとも、原告の「FACEBOOK」商標と商号が既に中国国内で非常に高い知名度を有することを証明することができる。

2、被告はインターネット空間に依存する会社として、本件の紛争ドメイン名を登録する時、原告の存在を知るべきであり、原告の「FACEBOOK」商標と商号が既に全世界に知られていることを承知するべきである。

3、被告は原告の「FACEBOOK」商標と商号が存在することを承知していながらも、如何なる回避対策を講じず、依然として本件の紛争ドメイン名を登録し、直接使用し、且つかかる商業行為において「FACEBOOK」と同じ標識を使用し、確かに一般公衆を混同させている。

 

なお、本件の全部証拠をまとめ、被告が本件において提出した以下主張に対して、専門家チームは支持しないこととした。

1、原告が現在中国市場へ進出できない原因は、中国の法律に反するからである。本件において、被告は原告の違法行為を証明できる如何なる直接的証拠がない。さらに、ドメイン名は本件紛争の標的該当民事権利として、通常の場合、所有関係に関係のない違法行為によってドメイン名の権利所属の変化を発生させることがない。原告に実際に不法行為があるため中国国内でその商業標識を使用できなくなったとしても、被告が機会を得てその標識を登録・使用し、中国国内で誤解させることは、一般のインターネット利用者に被告を原告と誤解させ、法律的にも被告が継続して混同可能性のある標識を使用することを許可してはならず、これは明らかに通常の公共秩序に反するからである。

2、被告により提出された「受動的使用」問題について。「受動的使用」の概念はまだ法律規範上の概念ではない。中国商標法においてこのような行為が商標使用に属するか否かについて明確に規定されていない。中国裁判所の司法的解釈及び司法判例においても、この問題に対する処理は一致した意見を形成していない。そのため、専門家チームは、本件において被告が「受動的使用」の概念に基づき提出した原告の商標は中国で使用されたことがないとの主張を支持しない。一歩譲ったとしても、本件において商標問題を考慮しないとしても、本件の結果には影響を与えず、原告の商号が構成において前記商標と完全に一致するからである。即ち、商標を考慮しない状況においても、商号の保護ルートにより原告が中国で法律によって保護される権利を有することを推定することができる。

 

上記理由をまとめると、被告の本件の紛争ドメイン名を登録し使用した行為は、ネットワーク世界における原告の知名度を利用し、これにより自分のクライアントを拡大しようとした故意が明らかに存在する。このような行為は悪意のある行為に属するべきである。

 

本件の事件証拠に基づき、専門家チームは被告は本件の紛争ドメイン名を登録する時に悪意があると判断した。本件の事情は《解決方法》第8条第3項の規定を満たす。

 

五、裁 決

 

上記事実と理由に鑑みて、《解決方法》《手続規則》及び《追加規則》に基づき、専門家チームは、本件の紛争ドメイン名は原告のフェイスブック社(FACEBOOK,INC.)に移転すべきであると裁定する。

 

                       専任専門家:郭禾

                    2016年3月24日 北京

         中国国際経済貿易仲裁委員会ドメイン名紛争解決センター

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