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2014年1月22日 北京市高級人民法院
注記:以下の訳文はあくまで原文理解の参考のための仮訳であり、詳細の確認は必ず中国語原文で行っていただきますようお願いいたします。
一 著名(馳名)商標(以下、「馳名商標」という)の認定と保護に関する事項
1. 2014年5月1日施行の改正商標法(以下、「商標法」に略称)における第十三条第二項又は第三項を係争商標の登録不認可又は無効の請求に適用する場合、引用商標が係争商標の出願日より前に広く知られていたことをその主要条件としなければならない。当事者により提供された引用商標が係争商標の出願日の後に馳名商標に認定された等の証拠で以って、引用商標が係争商標の出願日より前に広く知られた状態であったことを証明できる場合、それを採用しなければならない。
2. 係争商標の商標法第十三条第二項又は第三項に規定の登録不認可並びに使用禁止への該当性の判断は、原則として先に保護を求める商標が広く知られているかについて確定しなければならず、その状況が認められる場合において係争商標の馳名商標に対する複製、模倣又は翻訳、及び容易に消費者に混同又は誤認を発生させ、馳名商標の所有者の利益を損なうおそれがあるか否かについて判断する。
3. 当事者が商標法第十三条第三項の規定により同一又は類似の商品を指定して出願した係争商標に対して登録不認可又は無効を請求し、以下に掲げる要件を満たしている状況のもとに行政裁決が商標法第十三条又は三十一条を適用して下された場合、原則として適用法律の誤りに該当すると判断してはならない。
(1)当事者が係争商標の商標法第三十条又は第三十一条違反に対する主張を明確に行っていない
(2)当事者が登録不認可又は無効を請求した実質的理由が関連公衆に該商標と保護を求める商標との混同を容易に生じさせる
(3)当事者の係争商標に対する無効の請求が商標法第四十五条第一項に規定の五年の期間を経過していない
二 地理的表示の認定及び保護に関する事項
4. 当事者が商標法第十六条第一項に規定により係争商標に対して登録不認可又は無効の請求をする場合、係争商標の出願により該商標の商品が地理的表示の地域に由来するとの関連公衆の誤認が容易に生じることを証明しなければならない。
5. 当事者が先に出願して商標登録を受けた一般の商標をもとに、他人が出願した地理的表示又は団体商標が商標法第十三条第三項又は第三十条の規定に違反するとして登録不認可又は無効を主張した場合、これを認めない。当事者が先に登録した地理的表示の証明商標又は団体商標をもとに他人が出願した一般の商標が商標法第十三条第三項又は第三十条の規定に違反するとして登録不認可又は無効を主張した場合もこれを認めない。
6. 当事者が他人の出願した地理的表示の証明商標又は団体商標を商標法第十六条第二項の規定違反により登録不認可又は無効とする場合、商標法第三十条の「凡そこの法律の関連の規定の要件を満たさない」の文言を適用して審理する。
三 誤認混同の判断に関する事項
7. 商標登録者が登録した異なる商標はそれぞれ独立して商標権を享受するものとし、それらと前後に登録した商標との間に関連性を持たない。
8. 商標登録者の先に商標登録を受けた商標がその使用により一定の知名度を有し、故に関連公衆が、後に出願した同一又は類似の商品を指定商品とする同一又は類似の商標を先の商標と関連付け、両商標の商品がいずれも当該商標登録者に由来する又はそれと特定の関係があるとの認識を生じさせる場合、先に商標登録を受けた商標の業務上の信用は後に出願した商標にまで及ぶ。
9. 先に出願した商標が登録された後、後の商標を出願する前までに、他人が同一又は類似の商品を指定として後に出願した商標と同一又は類似した商標を登録して継続的に使用し、しかもそれが一定の知名度を得ており、先に登録された商標は未使用又は使用されたが知名度を得ておらず、関連公衆が、後に出願した商標と他人が先願して一定の知名度を得た商標とを混同する状況において、後に出願した商標の出願人が先に出願した商標との関連性を主張した場合、これを認めない。
10. 商標登録を受けていない係争商標がその使用により既に安定した市場秩序を形成しており引用商標と区別できると当事者が主張したが、その係争商標が引用商標の出願前に使用されていたことを証明できない場合、これを認めない。
11. 係争商標がその使用により既に安定した市場秩序を形成しており引用商標と区別できるという係争商標の出願人の主張については、係争商標の使用、知名度及び関連公衆に係争商標と引用商標との混同を生じさせないこと等を裏付ける証拠を証明しなければならない。引用商標の権利者が関連公衆に容易に係争商標と引用商標との混同を生じさせることを裏付ける証拠を提出することもできる。
12. 係争商標がその使用により既に安定した市場秩序を形成しており引用商標と区別できるという係争商標の出願人の主張については、係争商標の出願人が提供した証拠をもとに引用商標の権利者が提供した証拠を合わせ、係争商標の出願人の主観的状況等の要素を総合的に加味したうえで判断する。
13. 関連公衆の係争商標と引用商標とに対する区別の可否については、当事者が市場調査の結果を証拠として提出することができる。市場調査は、関連公衆の実際の商品購入時の具体的状況をできるだけ再現し、且つ関連公衆の及ぶ範囲、数量及びその確定、関連公衆により商品購入時に払われた注意の程度及び全体比較、隔離観察、主要部分比較等の方法の活用等について詳細に示さなければならない。上述の要素が欠けている、上述の要素の使用を誤っている又は調査の信憑性を確認できない市場調査の結果については、これを認めない。
四 先行権利の保護に関する事項
(一)氏名権
14. 政治家、宗教上、歴史上等の人物名を商標として出願し、それが中国の政治、経済、文化、宗教、民族等社会公共利益と公共秩序に否定的で、悪影響をおよぼす可能性が十分に考えられる場合、商標法第十条第一項(八)に規定の「その他の悪影響を与える」状況に該当すると判断することができる。
15. 自然人の氏名を商標とする出願により当該自然人の氏名権が損なわれた場合、商標法第十条第一項(八)に規定の「その他の悪影響を与える」状況に該当すると判断するべきでない。
16. 氏名には戸籍上に示される氏名のほかに、別称、ペンネーム、芸名、雅号、綽名等も含む。
17. 特定の自然人と対応関係にある主体の識別符号は当該自然人の氏名とみなす。
18. 特定の自然人の氏名と知りながら、盗用、不正使用等の手段を用いてそれを商標として出願した場合、商標法第三十二条に規定の特定の自然人の氏名権を損なう行為に該当すると判断しなければならない。
19. 自然人の名声はその氏名権保護の前提とはならない。但し、名声は関連公衆がある一つの氏名と特定の自然人との対応関係の有無を判断する際の考慮要素となり得る。
20. 一般の状況においては、自然人本人がその氏名権を主張しなければならない。それと代理の関係にあるモデル、俳優等氏名権者の授権の範囲を明確にした特別な授権書等を提出している状況にある場合、被授権者である代理人が利害関係者として該モデル、俳優等の氏名権を主張することができる。
(二) 著作権
21. 商標が著作物となるか否かについては、著作権法の規定により判断しなければならない。
22. 商標の設計原稿、著作物登録証明書、商標委託設計契約書、著作権譲渡契約書等は、商標の著作権の帰属を確定するための一応の証拠とすることができる。
23. 商標異議申立て又は無効審判請求の後に取得した著作権登録証明書のみでは、作品(著作物)の著作権の帰属の証明として不十分である。
五 関連手続に関する事項
24. 異議申立商標を出願した企業について、その営業許可証が取り消されたがその手続きが行われていない場合で、且つ次に掲げる事項に該当する場合、商標法第4条の規定により被異議申立商標を登録不認可とすることができる。
(1)行政裁決の決定時に、被異議申立商標を出願した企業の営業許可証の取消からすでに3年以上経過している
(2)被異議申立商標の譲渡又は他人への使用許諾を示す証拠がない
(3)被異議申立商標を出願した企業が審判手続き及び後続の訴訟手続きに参加しておらず、その企業の状況及び被異議申立商標の状況について説明又は主張がなされていない
(4)被異議申立商標が引用商標の複製、模倣であり、且つ両者の指定商品に一定の関連性がある
25. 審判手続きの過程で係争商標が譲渡され、被告が譲受人に審判手続きへの参加可否の明確な意思表示を求める通知を行わなかったことにより、直接譲受人に不利となる行政裁決を下し、これに対して訴訟中に譲受人が行政裁決理由及び結論の違法性を証明できる場合、当該行政裁決を取り消さなければならない。被告が譲受人に審判の手続きへの参加可否の明確な意思表示を求める通知を行わなかった場合でも、訴訟中に譲受人が行政裁決の理由及び結論の違法性を証明できない場合は、審判に対応する手続きの不当性を確認したうえで、対応する審判手続きの違法性に対する譲受人の主張を却下しなければならない。
26. 審判手続きの過程で係争商標が譲渡され、譲受人が後続の審判手続きに参加した場合、譲渡人はもはや当事者ではなく、対応する審判の裁決に対して訴訟を提起する権利がない。
27. 審判手続きにおいて郵送した商標審判案件受理通知書、挙証通知書、答弁通知書、証拠交換通知書及び証拠等の案件に関連する書類は、全て当事者の受領を以って送達の基準とする。
28. 原告が案件に関連する書類を受領していないことを主張し、送達手順に違法があった場合、被告は郵送された案件に関連する書類の受領が確認されていること又はその他受領又は送達とみなされることを証拠を以って証明しなければならない。被告が提出した書類発送の伝票等内部手続きの書類又は案件に関連する書類を郵便局に出し且つ返送されていないことを示す証拠は、送達完了を証明する証拠としては不十分である。
29. 案件に関連する書類を原告が受領した旨の証拠を被告が提供できない場合でも、その裁決理由と結論が妥当であり、原告が送達手続きの違法性の主張以外に主張若しくは証拠を提出しない場合、その主張若しくは証拠が明らかに成立しない場合、又は本案件の審理範囲に該当しない場合は、送達手続きの不当性を認定したうえで、原告の訴訟請求の棄却を決定することができる。
30. 審判手続きにおいて、原告が合議体の構成員に知らせなかったために忌避申立ての権利を行使できず、手続違法を理由に審判裁決の取消しを主張した場合で、訴訟において審判裁決を下す合議体の構成員に対して実質的な忌避申立理由を説明しなかった場合、忌避の手続きの誤りを指摘したうえで、原告の主張を却下しなければならない。
2014年1月22日
原文:北京市高級人民法院ウェブサイトより
http://www.bjcourt.gov.cn/article/newsDetail.htm?NId=25000688&channel=100001011&m=fyyw