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Beijing East IP Newsletter No.103

2023-07-10

【一】中国IPニュース

1. 『中国の権利侵害・模倣品取り締まり業務年次報告(2022)』を発表
国家品質強国建設協調促進指導サブグループオフィスは『中国の権利侵害・模倣品取り締まり業務年次報告(2022)』を発表した。同報告書によると、2022年、公安機関は知的財産
権侵害と模倣品・粗悪品製造販売の犯罪案件2.7万件を摘発し、検察機関は知的財産権侵害と模倣品・粗悪品製造販売の犯罪容疑者2.7万人を提訴し、審判機関は各種一審知的財産案件219.4万件を結審し、全国の法院は涉外知的財産一審案件約9000件を結審し、一審知的財産刑事案件5000件余りを結審した。
https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/398272.html

2. 最高人民法院は2022年知的財産案件年次報告を発表
最高人民法院は『最高人民法院知的財産案件年次報告(2022)』を発表した。この年次報告は最高人民法院が2022年に結審した知的財産権案件の中から43の法律適用問題を整
理したものである。報告書には請求項の解釈における外部証拠の使用規則、請求項の補正後に有效に維持された審決の遡及効、先行技術の抗弁における単一性の比較、先行技術の抗弁の基礎事実の合法性、「三無製品」(法律で規定された必要情報が記載されていない製品)の合法的な出所抗弁の認定、合法的な出所抗弁における合理的な注意義務の認定、
発明した実際の発明者の認定、権利侵害者が外部に主張した経営業績を損害賠償の計算根拠とすることができとした。また、権利侵害和解後に同じ権利侵害製品を再販した場合の懲罰的損害賠償責任、特許権安定性に疑問がある場合に当事者へ将来の利益保証を承諾をするよう誘導することができ、非権利侵害の訴えにおける「合理的な期間内の提訴」の認
定など、典型的な問題に関連している。
https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/397462.html

3. 2022年中国法院知的財産権案件TOP10と典型的知的財産権判例50件
4月20日、最高人民法院は2022年中国法院知的財産権案件TOP10と典型的知的財産権判例50件を発表した。知的財産権案件TOP10には中外製薬株式会社と温州海鶴薬業有限公司の特許権保護範囲に入るかの確認紛争案が含まれ、50件典型的知的財産権判例にはアップルコンピュータ貿易(上海)有限公司と国家知識産権局、クアルコム股份有限
公司の発明特許権無効審判の行政紛争案が含まれる。
https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2319.html

4. 中国初の量子コンピュータパテントプールが北京に設立
百度は北京量子情報科学研究院と共同による「量子コンピュータパテントプール」の設立を発表した。現在このパテントプールにはすでに数10件の量子特許が集まっており、連盟メ
ンバーに開放的に共有し、連盟メンバーのために協力の橋を架けることで量子産業業界標準の制定と標準必須特許の配置を推進する。
http://www.iprchn.com/cipnews/news_content.aspx?newsId=137707

5. 『百度人工知能イノベーションと特許白書2023』を発表
百度と北京知的財産保護協会が共同で主催した人工知能特許運用促進産業発展フォーラムは『百度人工知能イノベーションと特許白書2023』を発表し、人工知能のビッグモデル、
クラウド・インテリジェント一体化、自動運転、インテリジェント検索などの方面から、百度は人工知能特許分野におけるリーダーシップを示した。
http://www.iprchn.com/cipnews/news_content.aspx?newsId=138061

6. 2023年北京商標ブランド及び老舗商標保護フォーラムが開催
5月10日、北京市知識産権局主催、北京商標協会運営の2023年北京商標ブランド及び老舗商標保護フォーラムが北京で開催された。今回のフォーラムは商標ブランド発展交流プ
ラットフォームを設立し、商標ブランドの建設業務をさらに深化させ、商標ブランド管理とサービスを強化し、企業、特に老舗の自社ブランド保護意識の向上をサポートし、商標ブランドの発展の共通認識を凝集させ、ブランド保護の良好な雰囲気を作り、首都の知的財産強都市の建設を支援することを目的としている。
https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/5/16/art_57_185083.html

【二】中国知財豆知識

発明創造の実際の発明者の認定

2023年4月に最高人民法院は『最高人民法院知的財産案件年次報告(2022)』を発表した。この年次報告は最高人民法院が2022年に結審した知的財産案件の中から43の法律
適用問題を整理したものであり、今回はその中から第7条の発明創造の実際の発明者の認定(案件番号:(2021)最高法民申7941号)に関する内容を紹介する。

一.裁判の要旨
最高人民法院は、従業員が退職してから1年以内に第三者名義で係争専利が出願され、現在ある証拠により係争専利がこの従業員が元の職場で担当していた本職業務または割り
当てられた任務と強い関連性があると証明でき、かつ第三者がその従業員と利益関連の関係を有し、また係争専利を研究開発する技術能力を持たない場合、その従業員が係争専利の実際の発明者であり、係争専利は職務発明創造であると認定することができる、と示した。

二.案件の説明

(一)係争専利状況
係争専利:出願番号201520989568.0、発明名称「タッチ表示装置と電子機器」の実用新案。
(二)案件の背景
莫良華は2006年9月4日に敦泰公司に入社し、2015年3月6日に敦泰公司を退職した。莫良華は退職前に即に磨石公司を設立し、退職後1年以内である2015年12月3日に、磨
石公司は国家知識産権局に係争専利を出願し、発明者は賈一鋒、夏涛であった。
磨石公司は2015年2月9日に設立され、莫良華は同社の法定代表人、理事長であり、経営範囲は情報システムソフトウェア、電子製品、生物制品、化学工業製品(危険化学品を
含まない)、建築材料、機械機器の技術開発及び技術コンサルティング、投資コンサルティングである。一方、敦泰公司は長きに渡り指紋識別、タッチ表示などの技術研究開発に従事してきた。

三.紛争の焦点
莫良華は係争専利の実際の発明者であるか否か。

四.判断理由
係争専利は莫良華が敦泰公司で担当していた本職業務或いは割り当てられた任務と関連性がある。
莫良華が退職前に敦泰公司で担当していた本職業務及び参与していた研究開発は係争専利と関連があり、かつ『秘密保持及び競業制限契約』を結んでおり、磨石公司が従事して
いる技術分野は係争専利と関連性がない。
賈一鋒、夏涛は係争専利の研究開発能力がなく、かつ莫良華との間に利益関連の関係があり、二人は係争専利の実際の発明者ではない。

五.まとめ
この判例を通じて、退職後の従業員が第三者を発明者として専利出願を行ったとしても、係争専利がこの従業員が元の職場で担当していた本職業務または割り当てられていた任
務との強い関連性を証明する証拠を提供することができ、かつ当該第三者がその従業員と利益関連の関係にあり、また係争専利を研究開発する技術能力を持っていなければ、この従業員が係争専利の実際の発明者であると認定することができることが明確になった。本案は、職務発明の所有権帰属紛争に有益な参考となる。

以上、ご参考ください。

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